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雑記やら妄想の切れ端やら好き勝手やってみた、結果と言う名の残留思念。
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:刹那(13歳)、フェルト(11歳)の出来事。ホントはせっちゃんに『ナプキン』とか『タンポン』とか言わせたか…(ry:


風呂上りに三人で団子のように固まって、フェルトの髪を刹那が、刹那の髪をロックオンが乾かして。
そして、ロックオンの髪をフェルトが乾かしている間に、刹那がその手の手入れ―大仰な物言いだが、ハンドクリームを塗り込める程度の事だ。極々偶に爪も切らせてくれた。―をするのが暗黙のルールになって早幾年目のこと―。

『二人ももうお年頃だしなぁ?』

フェルトが十歳を迎えるか否か辺りを境にロックオンが切り出し、三人で風呂に入る事は無くなってしまった。
ロックオンとしてはもうちょっと早い段階で止めるつもりであったようだが、刹那もフェルトも何故そうする必要があるのかが解らず、ただ『ロックオンが言うのだから』と戸惑いを隠して提案を飲み込んだ。
その意味を知るのは、それから半年ほど経ってからだった。

**** **** **** ****

発育不良は依然としてそのままだったけれども、漸うドクターストップの解除された刹那がマイスターとしての訓練を開始した頃、フェルトも当たり前のようにメカニック、そしてオペレーターとしての知識へ徐々に手を伸ばしていた。
詰め込まれる全てに、眼前に晒される多量の情報に、まだ幼いといっても良い二人の身体と心は置いて行かれないよう踏ん張るので精一杯だ。
けれども、周囲のさり気無く手厚いサポート―筆頭はやはり兄貴分のロックオン、それと姉貴分のクリスティナだ。―もあって、素晴しく充実したものであった。
ただ愛しまれるだけだった頃ほど、べったりと一緒にいる時間は確実に減ったけれども、何事に関しても淡白な気のある二人の友愛は褪せる事は有り得なかった。
その絆は空気や水といった必要不可欠な物と同じくらい、当たり前の事象であったのだ。

「・・・・・・・・・?」

ある日、午後の身体訓練を終えて刹那が一人休憩室へと向かう途中、廊下の曲がり角の奥に身を潜ませているフェルトを見つけた。
淋しがりやなのか、単に好かれ易いだけなのか・・・何時もなら、一体はくっ付いている筈のカラーハロの姿も無く、ぽつねんと蹲っている。
時折、過剰摂取した情報の整理に一人で脳の回路を疾走させている時とは明らかに雰囲気が違っていて、引き寄せられるように刹那は近づく。
三メートル程手前に来て、刹那は眉根を寄せる。
フェルトから甘やかで鉄臭い匂い―つまり、血臭がするのだ。

「怪我か、フェルト?」
「―――せ、つなぁ・・・」

辛うじて問い掛けに応えた彼女の美しい緑色の双眸は潤みきっていた。
まだ丸みをありありと残す稚い美貌は青ざめているのに頬が赤らんでいて、呼気は若干の乱れを見せる。
カタカタ・・・小刻みに震えているのは寒気か、それとも両腕が庇っている腹部の痛みだろうか――刹那には判断がつかなかったが、明らかにフェルトが放っておける状態ではないのだと言う事だけは明確であった。
涙を零すフェルトを巧く宥める術を刹那は持ち合わせていない。
出来るのは安心感を与えられる体温を分けてやるぐらいだ。

「何処で怪我をしたんだ?」
「・・・・・・し、してない」
「でも、血の匂いがする」
「・・・・・・してない、でも、おなかいたいっ」
「病気か?」
「わかんない!」

首を振ったフェルトの涙を零す勢いが増した。
あわてた刹那が眦を拭うが拭った先から頬が濡れてしまう、いたちごっこ。
動けるようなら医務室へと誘導してやれるが、若干混乱しているフェルトには体力的にも精神的にも酷な仕打ちであるだろう。
刹那はその背を向けることで、フェルトへ打開策を提案した。

**** **** **** ****

「・・・・ドクタージョイス・モレノ。」
「おー、めっずらしいなぁ問題児!!俺が出向かんと予防接種も何も受けねぇ癖して」
メディカルルームの主は何がそんなに楽しいのか、ニヤニヤとほくそ笑みつつ、小さな来訪者を迎え入れた。
一般の医者にあるまじき大振りのサングラスと奇抜なヘアスタイルが目に付くが、腕は確かなもの。
また、フェルトを母親の胎より取り上げたと言うのだから、刹那が知る組織構成員の中でも一~二を競う古株でもある。
「急患だ、速やかな診察を要求する」
「何だ何だ、どうしたフェルト?」
刹那の首元に巻き付いた細い腕の主に気づいたモレノが静かに問う。
その声音はベテランの医師という訳だけで無く、まるで娘に対するもののように暖かな優しさに満ちている。
しかし、フェルトは小さく首を横に振り、ますます刹那に縋り付くばかり。
刹那は問診コーナーに設けられた簡易寝台に負ぶっていたフェルトを降ろし、一先ず身を休ませてやる事にした。
横たわったフェルトは腹部を庇う様に身を竦ませる。
刹那は何も言わず、淡々とその上に備え付けの膝掛けサイズの白いタオルケットを掛けてやる。
一連の流れを見ていたモレノがサングラスの奥の瞳をひっそりと瞬かせたが、幼い二人は気づくことは無かった。
「・・・俺が発見した時点でフェルトは腹痛を訴えた。血臭を感知したが、外傷等は負っていないらしい」
「ほうほう。フェルト、刹那の言ってること間違ってないか?」
「・・・・・・ん。」
こっくりと小さく肯定が返り、成長過程の細い身体が尚のこと縮こまる。
「・・・・・・昨日から、あんまり、気分良くなくて。今朝もちょっと気持ち悪くて・・でも、ちょっとだけ、だったから」
通常の既定通り講座訓練に参加し、終了後自室に向かう途中で我慢が出来なくなった所を、刹那に発見されたらしい。
「それは、クリスティナは知ってるかい?」
「・・・・・・うん、知ってる。どうしても、辛くなったらモレノさんに・・・って」
「模範的な回答だねぇ。間違ってはいないな。――よし、刹那、お使いを頼むよ」
ぽんと膝を叩いて、モレノは役目を終え立ち尽くしていた刹那に声を掛ける。
斜陽色をした猫目がゆぅるりと瞬き、モレノのサングラスに隠された双眸を射た。
「クリスティナかスメラギ女史を呼んできておくれよ。―見つからないようなら他の女性でも構わないけれど、できれば二人のどちらかか両方だな。ついでにこのメモを渡してくれると、とても助かる」
「端末では?」
「今回はちょっと、使いたくないんだ。済まないねぇ」
「・・・・・・了解した」
『多分、食堂かブリーフィングルームだから。』との助言を経て、刹那はその場を後にした。

***************************************************

お使い終了後、夕飯時の会話。

「―――ロックオン。『おせきはん』って何だ?」
「は?」
「スメラギ・李・ノリエガとジョイス・モレノが言っていた。フェルトを『おせきはん』で祝う、と」
「・・・・・・・・へぇ。」
「ロックオン?」
「んー、お兄さんもちょっと解らないなぁ~、後で調べて教えてやっから他の奴等には聞くなよ?」
「了解した。」
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